タグ: ヴィーガニズム

ビーガン検定はヴィーガニズムの一部しか捉えていない?

No Comments

ヴィーガン、ヴィーガニズムについての理解が深まるのは善いことだと思いますし、細々とではありますがそのために私もここでときどき情報を提供しています。ただ、これはいかがなものかと思ったのが、以下に紹介する「ビーガン検定」というもの。

https://vegelifestylist.com/

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000044921.html

みんなのごはんという会社が運営するもので、2級・1級・Pro級の3つのランクがあります。検定だけでなく講習も受けると、取得には2級で12,650円、1級は43,450円、Pro級は86,900円が必要になりますが、2級と1級は検定だけの受験も可能のようです。

さて、世のトレンドに乗ってビジネスをするというのは当然のことですし、それによって社会はよりよいものになっていくのでしょう。それでも、このビーガン検定は、ヴィーガニズムの捉え方が浅薄で、正しい理解につながらないと思えてなりません。以下に1級のカリキュラムを引用してみます。

ビーガン・べジの市場動向、種類毎のニーズと実践的な対応法、メニュー導入・食品開発のポイント、食材の置き換えと調理のポイント、栄養と留意点、サスティナブルな社会との関係(環境・食糧・動物福祉)

飲食業の人がヴィーガンやベジタリアンに食事を出すときには確かに役に立つかもしれませんが、少なくとも以下の2つの点で不十分だと考えます。

1.哲学的な背景が分からない

ビジネスとしては必須ではないかもしれませんが、上記のカリキュラムは、ヴィーガニズムやベジタリアニズムの哲学的・倫理学的な背景に触れていません。最後に「動物福祉」の文字は見えますが、「サスティナブル」という枠組みの中に位置づけられた動物福祉とはいったい何でしょうか。

2.食しか対象にしていない

ヴィーガニズムは、倫理学的な立場の違いはあるにせよ、動物を搾取しないということが理論の柱にあります。動物を搾取しないために動物を食の対象としないのであって、その逆ではありません。動物を搾取しないためには食だけでは不十分で、生活のあらゆる面を考慮する必要があります。しかし、この検定はあくまで食事面での対応のみを取り扱ったもののようです。

ヴィーガニズム・ベジタリアニズムが世に広まるのは望ましいことと考えていますが、この検定は「ビーガン検定」というよりは「ビーガン食検定」のようです。試しに受験してみようかとも思いますが…それはあくまでここで書いた内容を確認するためであって、ヴィーガニズムを推進するために、あるいはヴィーガニズムをより深く学ぶためにこの検定を受けようとは思えないことが、大変残念です。

ヴィーガンシューズは環境によいのか?

No Comments

ヴィーガンになる動機にはいくつかの種類があります。

昨今もっとも多いのは、「環境によいから」という理由ではないでしょうか。畜産業が縮小すれば、その分飼料作物の必要が減って農地も要らなくなり、環境への負荷が小さくなります。また、畜産業はそれ自体が多くの温室効果ガスを発生させています。ヴィーガンになることで、こうした環境への悪影響を軽減しようというのが、最近ヴィーガニズムが注目されているもっとも大きな理由だと思います。

これに対し、「靴を選ぶ」という観点から、ヴィーガンシューズが必ずしもそうでない靴と比べたときに環境に対する負荷が小さいわけでもない、ということを論じたのが以下の記事。

https://www.gearpatrol.com/fitness/a35814566/why-vegan-shoes-are-not-saving-the-planet/

たとえば、ビーチサンダルにはふつう動物性のものは使用されていないので、ヴィーガンです。しかし、代わりにプラスティックが使用されています。買い物袋やストローが問題になるこのご時世で、はたしてリサイクルの見込みの薄いプラスティック製のサンダルや靴を生産することの環境負荷がどの程度になるのかは、よくよく計算しなければ評価できないでしょう。

加えて、人工皮革の原料であるポリ塩化ビニル(PVC)には、柔軟性をもたせるための可塑剤にフタル酸エステルなどが使用されています。これら可塑剤は内分泌攪乱物質として乳児用品への使用が制限されるなど、多少の危険を伴う可能性があるもので、人工皮革から溶出してくる可能性があります。環境に対する害という点でどのくらいのインパクトがあるのかは分かりませんが、人体への影響は多少あるのかもしれません。

ヴィーガン素材の一部に上記のような課題がある一方で、世界的なトレンドとして、動物素材を使用した靴が次第に環境に配慮したものになってきてもいます。また、靴用の皮革はそもそも食用とされる動物の本来は廃棄される部位であったりしますから、おおもとである食においてヴィーガニズムが広がらなければ、皮革を使用しようがしまいが変わらない、という可能性もあります。

上記のように、環境のことだけを考えてヴィーガンになろうとするのであれば、それは必ずしも正しい判断ではないという可能性があります。そもそも、環境への負荷を最小限にしようとするとき、「動物由来のものを一切使用しない」というのは最善解にはなりえないでしょう。靴だけでなく、その他の衣料品や食についてもそうですが、動物由来の原料を環境負荷が極めて小さくして利用できる場面は多々ありえるからです。たとえば、繁殖し過ぎた鹿を狩って、食料や皮として利用する場合は、環境に対する負荷はほぼゼロか、あるいは森林が荒らされるのを軽減するという意味で、かえって環境に対してプラスになるかもしれません。

環境のためにヴィーガンになるのなら、少なくとも単に動物由来の原料を使用していないということだけでなく、どのような原料を使っているのかまで、製品をよくよく見極める必要があるでしょう。

一方で、動物に対する搾取をやめるべきだと考える倫理的な観点からヴィーガンとなることを選ぶのであれば、やはり靴についてもヴィーガンの選択をすることになります(私もそうです)。

さて、最後に、ヴィーガンシューズをふたつ紹介します。有名な例なのでご存知かもしれませんが、アディダスがいまヴィーガン/サステイナブル志向のスニーカーを販売しています。

https://shop.adidas.jp/item/?sustainable=vegan

他にもネットで検索すればいろいろな製品が見つかるかと思いますが、私自身は以下のブランドのシューズを愛用しています。

https://www.bravegentleman.com/

ヴィーガン・ベジタリアン向けのマッチングサービス

No Comments

ヴィーガンやベジタリアンの生活をしていて困る場面は多々あります。慣れてしまえばそうした困難の大部分も問題にはならなくなってきますが、それでも、ヴィーガンとなるべきかどうかを決心するうえで決定的な判断材料になるような困難もいくつかあると思います。

その一つが、恋愛・結婚でしょう。

少なくとも私がヴィーガンとなった2010年ごろには、周囲にはヴィーガンはいませんでした。今でも、従来からの交友関係からはやはりヴィーガンと新しく知り合うことはありません。

そうした中で、とくに学生や新社会人など若い人にとっては、いかに自分と同じ価値観をもち、同じような生活を自発的に送っている人と出会うかは、人生設計をするうえで極めて大事なことでしょう。

そうした課題を解決するうえで非常に有効だと感じるサービスを知りました。Vegglyというものです。

ヴィーガン向けのマッチングサービスで、2018年10月に事業を開始し、2021年2月時点で世界に30万人のユーザーがいるとのことです。

見てみたところ、すでに日本人も登録者は結構な人数いるようです。ヴィーガンとして恋愛の相手を探している人はもちろん、これからヴィーガンになるべきかどうかと悩まれている人も、一度覗いてみてはいかがでしょうか。(私自身はすでに結婚しているので詳しくは見ていないのですが…。)

ヴィーガニズムは環境によいわけではない?

No Comments

面白い記事を読みました。簡素であれば、通常の生活のほうがヴィーガニズムより環境に対する負荷が小さいというもので、著者は(ヴィーガンではないものの)ベジタリアンだそうです。

https://www.nzherald.co.nz/the-country/news/dr-jacqueline-rowarth-why-veganism-wont-save-the-world/3V7ADNXGUSEY6O4CUP2HBOZ3EU/

その論旨は以下の通りです。

まず、家畜の飼料について。家畜用の穀物の平均的な収量が12t/haであるのに対して、食用のものは8t/ha程度、さらに加工に際して多くの温室効果ガスが発生します。したがって、家畜を養うための飼料生産に使う土地を人間の食料生産に用いたほうがよい、という議論は必ずしも成り立たないというものです。

この議論は、細かな数字による比較がないためなんとも判断できません。ただ、肉を生産するにせよ牛乳を生産するにせよ、加工の過程で温室効果ガスが発生するはずですから、これを考慮すると畜産のほうが多くの温室効果ガスを発生させる気がします。

次の議論は、家畜が生育する中で必要とする飼料のうち、穀物は実は7%(肉牛の場合)にすぎない、というものです。面積あたりの収量の大きさと考え合わせると、畜産の飼料に使うエネルギーはもっと小さいということでしょう。しかしこれも、穀物を摂取してそれが肉に変わる効率を考えると、やはり説得力が薄いように思います。また、以下のレポートによると飼料としての小麦・トウモロコシは生産全量の3割以上はあるようなので、とても無視できる量とは言えないでしょう。

https://www.mitsui.com/mgssi/ja/report/detail/1225337_10674.html

さて、否定的なことを書いてきましたが、私としては、ヴィーガニズムが動物を利用する生活より環境に対して必ずよい、ということは言えないとも思います。むしろ、いわゆるリンダ問題と同様、論理的にはヴィーガニズムは最善の解とはなりえないでしょう。動物を利用する食料生産は、ヴィーガニズムが利用できる食料生産の一切を利用できるわけですから、ヴィーガニズムが環境にとってよい選択肢であるとしても、その中で環境負荷が高い部分と、動物利用の中で環境負荷が極めて少ない部分とを取り替えるとしたら、後者のほうが全体としての環境負荷も小さくなるはずです。

たとえば、穀物生産が難しい土地では、放牧によって多少の動物を利用するほうが、環境への影響は小さくなるでしょう。まして、魚は大量にとらない限りは環境負荷はほとんどゼロでしょうから、環境のことだけを考えて魚も消費しないヴィーガンになることは、あまり論理的とは言えません。

以上のように、リンク先の議論とは多少異なりますが、私もヴィーガニズムが環境に対して最もよい答えだとは考えていません。それでもなぜ私がヴィーガンであるかといえば、他のところで書いているように、動物解放の観点からです。

環境の観点からヴィーガンが増えて動物の苦痛が減るのであれば、動物解放論者の希望にも結果的には叶うことになります。ただ、私としては、動物解放とか種差別という概念がもっと世に広がるよう、動いていくつもりです。

ヴィーガニズムにまつわる誤解

No Comments

ヴィーガニズムがどのようなものかについては、色々な誤解があります。以下の記事で主要な5つのものについて語られていますが、日本ではどうかという観点も踏まえたうえで、私自身の考えを織り交ぜながら説明していこうと思います。

https://www.mensxp.com/special-features/features/84289-common-myths-about-veganism.html

ヴィーガニズムとベジタリアニズムはおなじもの

これについては本ブログでも書いていますので、そちらも参照いただければと思います。

大まかに言うと、ベジタリアニズムが基本的には食生活にかかわる概念であるのに対して、ヴィーガニズムは生活全般についてのものです。ベジタリアンは肉や魚を食べることを避ける一方で、皮革製品を身につけることには疑問をもたないかもしれません。ヴィーガンですと、動物を搾取すること全体を不可と考えるので、食生活から肉や魚や牛乳や卵を除くのと同時に、衣類や家具、医薬品など、自身が使用・消費するあらゆるものについて、動物由来の原料を使っていないものを選択しようとします。

ただし、ベジタリアンと名乗る人の中にも、実際には動物の解放・福祉といった観点からそうした選択をする人は大勢います。私自身も、ヴィーガンという呼び方がまだ日本では一般的でないということもあり、ベジタリアンと自称することは度々あります。ベジタリアンと自称しているからヴィーガンではない、というわけではありません。

ヴィーガンはタンパク質不足

普通の食生活から単純に動物性のものを排除しただけでは、タンパク質不足になります。これは否定しようのない事実です。

しかし、ヴィーガンがタンパク質を摂るための手段は多数あります。リンクした記事には豆類、ドライフルーツ、大豆といった食材が書かれています。日本では、とくに豆腐や納豆といった大豆製品が有力なタンパク源になるでしょう。そのほか、海外で主要なものとしてはキヌアがあります。こちら、日本でもカルディなどで売られていますし、ネットで購入することもできます。ただし、大豆に比べるとかなり割高になります。

もっと効率のよいものとしては、大豆由来のプロテイン(ソイプロテイン)があります。ただし、ものによってはソイプロテインと銘打っていても乳を含んでいるものがあるので、よく成分を確認することが必要です。

ヴィーガニズムは高くつく

これも一面の真理を含んでいると思います。普通の食生活から動物由来のものを取り除くだけであれば、食費は安くなるでしょう。皮革製品を合皮にか変えても、やはり出費は安くすむと思います。しかし普通の食生活と同じ程度のタンパク質を摂取しようと思うと、食費はかえって高くなる可能性があります。

とくに日本では農作物の価格が高いこともあって、輸入の肉類と大豆製品を比べると、タンパク質含量あたりの単価はどうしても肉類の方が安くなります。もちろん、もともと高級な肉ばかり食べているようなら、ヴィーガンになったほうが食費も安くなります。

また、これも日本ならではですが、外食が異様に安いということもポイントです。もちろん普通のレストランであれば、スーパーで食材を買って作る家庭料理よりは高くつきます。しかし、牛丼のような安さを売りにした店は、自炊するのに近い単価で食事を提供しています。残念ながら、こうした店がヴィーガン向けのメニューをもっていることはありません。もともと外食中心の食生活を送っている場合、ヴィーガンになると食費が高くなると思います。

こうしたことを踏まえた上で、多少タンパク質の摂取量を減らすことが、食費を維持するためには必要になります。

豆乳だけが選択肢

牛乳は多くの人にとって重要な栄養源であり、デザート類の味をよくするための原材料でもあるでしょう。栄養源という観点からは、植物由来の素材でも代替しやすいものです。

その一方で、デザート類、菓子類には、牛乳を使用しているものが無数にあります。普通の食生活を送っていると意識することはないかもしれませんが、試しにスーパーの菓子コーナーで原材料を確認してみれば、とくに西洋系の菓子のほとんどに乳製品が使われていることに気づくはずです。

牛乳の代替品としては、豆乳の他、リンク先に書かれているようにココナッツミルク、アーモンドミルク、ヘンプミルク、カシューミルク、ライスミルクなど、いろいろなものがあります。飲み物として消費するのであれば、多少高くはなりますが、これらのうちに気に入るものがあれば、ヴィーガンとなって困ることは少ないでしょう。

しかし、菓子を中心として、もともと多くの食材に牛乳が使われているということは、ヴィーガンにとって厄介です。パンについても、普通のスーパーの売り場には乳製品を使っていないものはほとんど置いてありません。スープも、クリーム系のもので豆乳などをベースにしているものは普通は見かけません(なお、クリーム系でなくても、スープはコンソメやチキンエキスなど使用しているので、普通のスーパーではヴィーガンの選択肢は皆無です)。

こうした利便性の面での不自由を受け入れた上で、もし乳製品を使った味をそれでも楽しみたい場合は、そうした製品が売られている店を探すか、通販を利用するか、自身で作るかする努力が必要です。

ヴィーガンは弱くなる

これも、普通の食生活から動物性のものを除くだけだったとしたら、事実でしょう。ヴィーガンという生き方を選択するなら、栄養についてはある程度意識しなければなりません。

かし、ヴィーガンだと体が弱くなるかといえば、そんなことはありません。それは、私自身の実践から、確信をもって言えます。

私は10年以上ヴィーガンをしています。風邪くらいはひくことがありますが、ヴィーガンになってから病気になりやすくなったということも、大病を患ったことも、気力が出ないとか体がだるいといったこともありません。

健康診断の結果も、まったく異状なしです。ただし、最初はヘマトクリット値が低いと診断されたことはありました。もともとそういう体質だったのか、ヴィーガンとなったからなのかは分かりませんが、その後鉄分を意識して摂るようにしてからは、その問題もなくなりました。

もともと何かしら体に問題がある場合には、動物性のものを摂らなくなることで健康に害が生じることはあるのかもしれません。あくまで自身の可能な範囲で試してみてもらえればと思います。もともと健康ならば、少し栄養のことを意識するだけで、ヴィーガンとなっても特段の問題は起こらないでしょう。関心があれば、まずは短期間だけでも、実践してみてはいかがでしょうか。