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ヴィーガンになる前に心構えしておくべきこと3選

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一定の覚悟をもったうえでヴィーガンになったとしても、実際になってみると、想像していなかった課題や問題が発生してくるものです。今回は、私自身がヴィーガンの生活を継続するうえで役立ったと思う心構えや方法を3つに絞って紹介してみます。

ルーチンとなる食料品をもっておく

ヴィーガンになると、スーパーで買い物をするにしても、動物性のものを使っていないかどうかをラベルでいちいち確認することが必要になります。慣れてしまえば大体の食品がヴィーガンかどうか覚えてしまいますが、そこに至るまではかなり面倒だと思えるでしょう。そこで、好きなものを中心に、「これは毎日でも食べられる」という食品をいくつか確認しておくとよいです。

私自身がお勧めしたいのは、以下のようなものです。

グラノーラ

グラノーラは乳製品を含んでいることが多いですが、そうでないものも複数あります。豆乳やオーツミルクをかけるだけで簡単に食べられますし、栄養も豊富なのでお勧めです。

私自身は、ケロッグの「朝摘みいちご」という商品をよく購入しています。組み合わせるのはキッコーマンの「特濃調整豆乳」のことが多いです。

https://www.kelloggs.jp/ja_JP/products/fruit-granola-asatsumi-ichigo.html

https://www.kikkoman.co.jp/products/product/K581005/index.html

乾麺&味ぽん

乾麺や冷凍麵、玉うどんなどは、ヴィーガンでなくても普段から利用する人が多いのではないでしょうか。ヴィーガンが困るのは、つゆです。普通の麺つゆはかつおだしなどが使用されているため、ヴィーガン仕様ではありません。ヴィーガン向けのつゆもないわけではありませんが、普通には販売されていません。醤油とみりんを組み合わせてオリジナルのつゆを作ってもいいですが、多少時間がかかります。

そこで私は、味ぽんをよく使います。ミツカンの味ぽんは動物性のものを使用していないので、麺類はもちろん、炒め物など様々な料理に使っています。

https://www.mizkan.co.jp/product/group/index.html?gid=05001

ソイミート

最近はソイミートも種類が増えてきており、普通のスーパーでも、乾物売り場などで簡単に見つけられるようになってきています。

複数の選択肢があれば別ですが、どれも大きく変わることはないと思いますので、見つけられたものを試してみてはいかがでしょう。私自身は、近所のスーパーで売られている、マルコメの「大豆のお肉乾燥タイプ」を使っています。

https://www.marukome.co.jp/daizu_labo/product03/

栄養を計算しておく

定番となる食品を決める上で、それらの食品がどのくらいの栄養を含んでいるのか確認しておくとよいです。とは言っても、さまざまな栄養素のすべてを確認していくのは大変です。

私の戦略は、普段の食事について炭水化物・タンパク質・脂質のバランスだけ確認しておいて、あとは、ヴィーガンに不足しがちな栄養素に絞って十分に摂取しておくというものです。

炭水化物・タンパク質・脂質のバランスですが、通常の食生活から動物性のものを取り除いただけだと、炭水化物が多く、タンパク質と脂質が少ないバランスになりがちです。

とくに炭水化物過多・タンパク質不足は、健康上も体重管理上も望ましくありません。これを解消するには、大豆製品やナッツなど、高タンパク質のものを積極的に摂取していくことが必要です。しかし、とくにスポーツをしている人にとっては、それだけで不足を補うことは困難です。

そこで、植物性原料によるプロテインを利用するのもよいでしょう。いろいろなメーカーがソイプロテインを製造していますが、物によっては乳製品を使用しているので注意してください。スポーツ用品店やドラッグストアで普通に売られているソイプロテインは、かなりの確率で乳製品を使用していると思いますし、価格も高いです。私としては、海外メーカーの商品のほうが、高品質でしかも低価格ですし、明確にヴィーガンを謳っているものも多くあるので、おすすめです。たとえばMYPROTEINというメーカーは多数のヴィーガン向けプロテインを販売しています。

https://www.myprotein.jp/

脂質も、実は意識しておく必要があります。普通の脂質でしたら多かろうが少なかろうがあまり健康には影響しないかと思いますが、DHAのような脳のエネルギーとなる脂質は、魚以外から摂取するのは難しいです。

そこで、えごま油やアマニ油などのαリノレン酸を多く含む油をサプリメント感覚で使用するとよいでしょう。普通のスーパーでも、油売り場に一種類くらいはおいてあるはずです。私自身も、えごま油を毎朝少量食事にかけて摂取しています。

その他不足しやすいものとしては、ビタミンB12、カルシウム、ヨウ素などが挙げられます。これらは食事だけからは十分に摂取することが難しいかと思いますので、ヴィーガン向けのサプリを利用するとよいです。

ヴィーガンになる目的と理由を明確にしておく

まだまだ日本ではヴィーガンは少数派です。あなたがヴィーガンになったとして、おそらくあなたがこれから出会う人のほとんどは、あなたが人生で出会う最初のヴィーガンでしょう。いろいろと面倒な質問をされるかもしれません。

そうでなくとも、ヴィーガンを継続するために、目的と理由を自分なりにはっきりと整理しておくことが大事です。

もし、目的が「健康になること」だったら、私はヴィーガンになることを勧めません。上述したように、健康を維持しつつヴィーガンの生活をするためには少々考えなければいけません。野菜をたくさん摂ることが健康になるために必要だったら、多少動物性のものを食べる量を減らして、その分野菜を増やせばいいだけの話です。健康が目的ならヴィーガンになる必要はありません。

ヴィーガンの生活を始める上で、動機が動物のためであるか、環境のためであるかのいずれかなら、ぜひヴィーガンになっていただければと思います。動物を食べる生活とヴィーガンの生活とで、後者の方が動物にとっても環境にとってもよいということは、学問的にもほぼコンセンサスがとれていると言ってよいでしょう。

質問をされたときに、堂々とヴィーガンとなるべき理由を答えられるかどうか、自問してみてください。

代替肉の意味を理解しかねている日本人

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ヴィーガンであればそもそも肉を食べませんが、ヴィーガンでなく肉を普段から食べていても、代替肉が肉と価格・味の点で同等であれ代替肉を選ぶという人は、かなりの割合でいるようです。

世界中の肉を食べる人たちの大部分は、今でも植物性の代替肉よりも本物の肉を好むが、10人に4人は価格と味が同じであれば植物由来の代替品を選ぶと答えている。実際、調査対象27カ国のうち、アルゼンチン、ブラジル、中国、インド、メキシコ、タイ、ベトナムの7カ国では、半数以上の消費者が本物の肉よりも代替肉を選ぶと答えた。おもしろいことに、これらの国のほとんどは肉を大量に食べ、毎年多くの資源を肉の生産に費やしている。

https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_60d185e3e4b01da305b606de

その理由までは上記サイトでは踏み込まれていませんが、書きぶりからすると、環境の維持・向上に貢献したいという思いのために、環境負荷の大きい肉よりも代替肉を選びたいと望む人がいる、ということなのでしょう。

私としては、苦痛を感じる動物であれば倫理的な配慮の対象とすべきという立場からヴィーガンになったので、環境のためにという判断とは違う志を規範にしています。とはいえ、目的が違おうとも手段は近く、環境目的であっても結果として動物の苦痛が減るのであれば、それはやはりよいことだと考えます。それに、人によって優先順位は違えど、「環境のために」というのも、非常に重要な目的でしょう。いわゆる帰結主義の考え方をとっても、徳倫理学的な考え方でも、こうした情勢を望ましく思っています。

ただし、日本ではこうした潮流は他の国に比べて小さいようです。それは、私がヴィーガンとして生活していても、人々との会話の中で感じるところです。環境のためには食肉は望ましくない、という考え方をもち、実践している人は、ごくわずかです。まして、動物倫理の観点を理解している人には、ほとんど出会うことがありません。こうした社会環境が変わっていくように、行動を続けていきたいものです。

一方、27の市場の中でも日本、スウェーデン、オーストラリアが最も行動変容に消極的だったという。

https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_60d185e3e4b01da305b606de

Seaspiracyと漁業の倫理性

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Netflixが制作しているSeaspiracyという映像作品が、物議をかもしているようです。

https://www.pressherald.com/2021/04/10/fishing-industry-blasts-netflix-seaspiracy-documentary-for-suggested-seafood-boycott/

上記のサイトでは、Seaspiracyが誤ったデータに基づいた議論をしているとか、持続可能性の低い漁業形態ばかりを取り上げてサステイナブルな漁業を紹介していない、といった反論がなされています。それは確かにそうでしょう。

動物解放論の立場から残念なのは、結局、漁業に対する批判も擁護も、環境という観点からの議論ばかりがなされていることです。そこで搾取されている魚やそのほかの生き物の苦痛や不幸といった観点は抜け落ちています。環境の観点から結局同じ施策にたどり着くのであれば、それはそれでよいのかもしれませんが…

なお、Seaspiracyの映像へのリンクは以下です。

https://www.netflix.com/jp/title/81014008

ヴィーガンシューズは環境によいのか?

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ヴィーガンになる動機にはいくつかの種類があります。

昨今もっとも多いのは、「環境によいから」という理由ではないでしょうか。畜産業が縮小すれば、その分飼料作物の必要が減って農地も要らなくなり、環境への負荷が小さくなります。また、畜産業はそれ自体が多くの温室効果ガスを発生させています。ヴィーガンになることで、こうした環境への悪影響を軽減しようというのが、最近ヴィーガニズムが注目されているもっとも大きな理由だと思います。

これに対し、「靴を選ぶ」という観点から、ヴィーガンシューズが必ずしもそうでない靴と比べたときに環境に対する負荷が小さいわけでもない、ということを論じたのが以下の記事。

https://www.gearpatrol.com/fitness/a35814566/why-vegan-shoes-are-not-saving-the-planet/

たとえば、ビーチサンダルにはふつう動物性のものは使用されていないので、ヴィーガンです。しかし、代わりにプラスティックが使用されています。買い物袋やストローが問題になるこのご時世で、はたしてリサイクルの見込みの薄いプラスティック製のサンダルや靴を生産することの環境負荷がどの程度になるのかは、よくよく計算しなければ評価できないでしょう。

加えて、人工皮革の原料であるポリ塩化ビニル(PVC)には、柔軟性をもたせるための可塑剤にフタル酸エステルなどが使用されています。これら可塑剤は内分泌攪乱物質として乳児用品への使用が制限されるなど、多少の危険を伴う可能性があるもので、人工皮革から溶出してくる可能性があります。環境に対する害という点でどのくらいのインパクトがあるのかは分かりませんが、人体への影響は多少あるのかもしれません。

ヴィーガン素材の一部に上記のような課題がある一方で、世界的なトレンドとして、動物素材を使用した靴が次第に環境に配慮したものになってきてもいます。また、靴用の皮革はそもそも食用とされる動物の本来は廃棄される部位であったりしますから、おおもとである食においてヴィーガニズムが広がらなければ、皮革を使用しようがしまいが変わらない、という可能性もあります。

上記のように、環境のことだけを考えてヴィーガンになろうとするのであれば、それは必ずしも正しい判断ではないという可能性があります。そもそも、環境への負荷を最小限にしようとするとき、「動物由来のものを一切使用しない」というのは最善解にはなりえないでしょう。靴だけでなく、その他の衣料品や食についてもそうですが、動物由来の原料を環境負荷が極めて小さくして利用できる場面は多々ありえるからです。たとえば、繁殖し過ぎた鹿を狩って、食料や皮として利用する場合は、環境に対する負荷はほぼゼロか、あるいは森林が荒らされるのを軽減するという意味で、かえって環境に対してプラスになるかもしれません。

環境のためにヴィーガンになるのなら、少なくとも単に動物由来の原料を使用していないということだけでなく、どのような原料を使っているのかまで、製品をよくよく見極める必要があるでしょう。

一方で、動物に対する搾取をやめるべきだと考える倫理的な観点からヴィーガンとなることを選ぶのであれば、やはり靴についてもヴィーガンの選択をすることになります(私もそうです)。

さて、最後に、ヴィーガンシューズをふたつ紹介します。有名な例なのでご存知かもしれませんが、アディダスがいまヴィーガン/サステイナブル志向のスニーカーを販売しています。

https://shop.adidas.jp/item/?sustainable=vegan

他にもネットで検索すればいろいろな製品が見つかるかと思いますが、私自身は以下のブランドのシューズを愛用しています。

https://www.bravegentleman.com/

ヴィーガニズムは環境によいわけではない?

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面白い記事を読みました。簡素であれば、通常の生活のほうがヴィーガニズムより環境に対する負荷が小さいというもので、著者は(ヴィーガンではないものの)ベジタリアンだそうです。

https://www.nzherald.co.nz/the-country/news/dr-jacqueline-rowarth-why-veganism-wont-save-the-world/3V7ADNXGUSEY6O4CUP2HBOZ3EU/

その論旨は以下の通りです。

まず、家畜の飼料について。家畜用の穀物の平均的な収量が12t/haであるのに対して、食用のものは8t/ha程度、さらに加工に際して多くの温室効果ガスが発生します。したがって、家畜を養うための飼料生産に使う土地を人間の食料生産に用いたほうがよい、という議論は必ずしも成り立たないというものです。

この議論は、細かな数字による比較がないためなんとも判断できません。ただ、肉を生産するにせよ牛乳を生産するにせよ、加工の過程で温室効果ガスが発生するはずですから、これを考慮すると畜産のほうが多くの温室効果ガスを発生させる気がします。

次の議論は、家畜が生育する中で必要とする飼料のうち、穀物は実は7%(肉牛の場合)にすぎない、というものです。面積あたりの収量の大きさと考え合わせると、畜産の飼料に使うエネルギーはもっと小さいということでしょう。しかしこれも、穀物を摂取してそれが肉に変わる効率を考えると、やはり説得力が薄いように思います。また、以下のレポートによると飼料としての小麦・トウモロコシは生産全量の3割以上はあるようなので、とても無視できる量とは言えないでしょう。

https://www.mitsui.com/mgssi/ja/report/detail/1225337_10674.html

さて、否定的なことを書いてきましたが、私としては、ヴィーガニズムが動物を利用する生活より環境に対して必ずよい、ということは言えないとも思います。むしろ、いわゆるリンダ問題と同様、論理的にはヴィーガニズムは最善の解とはなりえないでしょう。動物を利用する食料生産は、ヴィーガニズムが利用できる食料生産の一切を利用できるわけですから、ヴィーガニズムが環境にとってよい選択肢であるとしても、その中で環境負荷が高い部分と、動物利用の中で環境負荷が極めて少ない部分とを取り替えるとしたら、後者のほうが全体としての環境負荷も小さくなるはずです。

たとえば、穀物生産が難しい土地では、放牧によって多少の動物を利用するほうが、環境への影響は小さくなるでしょう。まして、魚は大量にとらない限りは環境負荷はほとんどゼロでしょうから、環境のことだけを考えて魚も消費しないヴィーガンになることは、あまり論理的とは言えません。

以上のように、リンク先の議論とは多少異なりますが、私もヴィーガニズムが環境に対して最もよい答えだとは考えていません。それでもなぜ私がヴィーガンであるかといえば、他のところで書いているように、動物解放の観点からです。

環境の観点からヴィーガンが増えて動物の苦痛が減るのであれば、動物解放論者の希望にも結果的には叶うことになります。ただ、私としては、動物解放とか種差別という概念がもっと世に広がるよう、動いていくつもりです。