タグ: ヴィーガニズム

Wagamamaが肉の使用を2021年中に半分に

No Comments

イギリスにおよそ150軒ほどあるというアジア料理チェーンWagamamaが、メニューから肉を使用する料理を半減させるという宣言をしたそうです。ヴィーガニズム運動の中心であるイギリスでも、一定以上の規模をもつレストランがヴィーガンへとシフトしていこうとすることは、かなり勇気のいる経営判断だったのではないでしょうか。

このWagamamaというレストラン、名前は日本語ですが、創立者は香港出身で、日本進出はしていないようです。ホームページにはシェフが日本にて研究を重ねてきたといった記述があります。が、ヴィーガンメニューのところに書いてある「kare burosu ramen」など、おいしそうではあるものの得体の知れないメニューもあり、日本食と呼べるかどうかというと微妙なラインです。

Wagamamaのホームページは以下です。

https://www.wagamama.com/

日本食のヴィーガン版がかえって海外で発展して、そのうち日本にも入ってきて日本の食文化も刺激を受ける――といったことがあれば、日本での食のあり方もまた多少は変わるでしょうか。今後の展開に期待したいものです。

新型コロナウイルスワクチンはヴィーガン仕様か?

No Comments

コロナ禍が始まって一年を迎えようとする中、開発されつつあるワクチンがはたして有効なものかどうかということは、世界中の人々が関心を寄せるところでしょう。

ところで、ヴィーガンにとっては、医薬品を使うにあたって気にかかることがあります。「その薬はヴィーガン仕様か?」という問題です。

結論から言えば、完全にヴィーガンな医薬品はないと思ったほうがよいでしょう。新型コロナウイルスのワクチンについてもそうです。

医薬品が動物と関わる仕方は主に2つあります。第1に、医薬品自体に動物由来の成分が含まれている場合。第2に、医薬品の効果や安全性を検証する過程でいわゆる動物実験が行われている場合。

以下のサイトによると、新型コロナのワクチンでは、いま一番注目されているファイザーのもので、64匹のマウスと42匹のマカク猿が実験に供されたそうです。

Speaking about the vaccine, Dr. Bitterman says there was animal testing – as with any other medical product. Speaking specifically about the Pfizer vaccine, he says 106 animals in total were used in testing (and then killed). This breaks down into 64 mice and 42 macaque monkeys. When it comes to another vaccine (Moderna), he says the data isn’t as clear, but he believes the number to be similar.

https://plantbasednews.org/lifestyle/health/is-covid-vaccine-vegan/

このサイトでは、ワクチンの開発過程で動物が実験に供されているものの、ワクチンを使うことによって無数の命が救われることを考えると、ヴィーガンであってもワクチンを使うべきとの主張をしています。功利主義的な言い方をすれば、快楽計算をしてみると、得られる人間の利益のほうが、動物が被る損害より大きくなるはずだ、ということでしょう。

私自身はワクチンが安全で利用可能となったときに使うかどうかはまだ決めかねていますが、上記の考え方は動物解放の観点からも肯定されるものではないかと思っています。理想は、ワクチンの開発が不要となるほど早くにコロナ禍が収まることですが…

観光庁主催のベジタリアン・ヴィーガン受け入れセミナー

No Comments

新型コロナウイルスのため観光産業は苦境に立たされていますが、2021年1月14日に観光庁がインバウンドを意識した、ベジタリアン・ヴィーガン受け入れ対応のための無料オンラインセミナーを実施するそうです。ホームページを見る限りでは、先着50名なら誰でも受講できるようです。

その内容はホームページをご覧いただきたいのですが、少し気になることがありました。ベジタリアンやビーガンについて触れた文章でよく見かける表現ではあるのですが…ホームページから引用してみます。

他国では一般的となってきたところもある、ベジタリアン・ヴィーガンと言った食文化

https://hotelbank.jp/%E8%A6%B3%E5%85%89%E5%BA%81%E4%B8%BB%E5%82%AC%E3%83%99%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%82%AC%E3%83%B3%E5%8F%97%E3%81%91%E5%85%A5%E3%82%8C%E3%82%AA/

ベジタリアニズムやヴィーガニズムははたして「食」「文化」なのか。

まず「文化」という言葉。これは歴史的に自然に形成されてきたものを指す言葉だと思うのですが、ヴィーガニズムは文化でしょうか。少なくとも倫理学的な背景からヴィーガンとなることを選択した私にとって、その選択を文化と呼ばれることには非常に違和感があります。イギリスやアメリカやオーストラリアの哲学者たちがヴィーガンとなるのは、文化のためでしょうか(アングロ・サクソン文化?)。

あるいは、ヒンドゥー教徒がラクトベジタリアンであること。単に食事だけに関することとか、食を起点として広がる一連の実践であるなら、文化という捉え方もできるのかもしれません。しかしヒンドゥー教のラクトベジタリアンの場合は文化だからそういう食生活を送っているのではなく、もっと大きなヒンドゥー教という枠組みの中での具体的な実践の一例として肉を食べないのですから、その食生活自体を文化と呼ぶことは難しいのではないでしょうか。

それから、「食」という言葉。確かにベジタリアンという言葉には食に関する選択だという含みが強いと思います。たしかに、肉が嫌いだからとか、肉を食べないほうが体型維持によさそうだといった理由でベジタリアンとなった人も少なくはありません。世間一般の理解も、ベジタリアンやヴィーガンというのは食に関する選択だというものでしょう。

しかし、少なくとも一部のベジタリアンやヴィーガンは、「動物を苦しめるべきではない」とか「環境に対する負荷をできる限り小さくしなくてはいけない」といった価値観のもと、包括的な実践の一部として、肉を食べないという選択をしているのです。だから、革製品を買わなかったり、動物園や捕鯨に反対していたりもするのです。

食は人間が生きるうえで日常的な不可欠の要素なので、そのぶん配慮すべき場面が多くなります。それでも、ベジタリアニズムやヴィーガニズムを食についてのものと捉えるのでは、スコープが狭すぎます。

今回のセミナーは、紹介文を書いた人の理解あるいは配慮が足りないだけで、実際には動物解放論などの思想的背景にも触れてくれるものなのかもしれませんし、そうであることを願います。一方で、もしあくまで「食文化」としてベジタリアニズムやヴィーガニズムを捉えたものなら、料理だけベジタリアン対応にしておいて昼間は水族館に行くようなツアーも問題ないことになってしまいます。

ベジタリアン・ヴィーガン・動物解放論者の違い

No Comments

社会生活を送り、他者との接点をもつ上で、動物解放論がもっとも影響するのは食事のことです。何を食べられるのか、何を食べないのかといったことは、ベジタリアンでない人と一緒に過ごすときに、一番頻繁に問題となることです。そこで必然的に、とくに説明する時間があまりない場合は、私は自分のことをベジタリアンないしヴィーガンと自己紹介することが多いです。

一方、時間がある場合や、深いつながりが生じるであろう相手には、私は自分を動物解放論者だと形容します。

動物解放論と、ベジタリアニズム・ヴィーガニズムは、同じものを指す場合も多いですが、意味するところが異なる場面も多々あります。

動物解放論とは

一般的には、動物解放論はベジタリアニズム・ヴィーガニズムを含むと思われます。奴隷解放や女性解放と同様のロジックで、道徳的配慮の対象として適切に認められていなかった動物という主体にもしかるべき配慮をすべきであるというのが、動物解放論の概要です。したがって、動物解放をとなえるなら、ふつうは動物を殺さない、傷つけない、すなわち動物を食べないというライフスタイルをもつことになります。ただし、動物に今以上の道徳的配慮をすべきと論じていても、それが動物を食べることをやめることまでは要求しない可能性はあります。この場合、動物解放論者であっても、必ずしもベジタリアンであるとは限りません。

ベジタリアニズムとは

一方、ベジタリアンという言葉は、基本的には食生活のスタイルを指すものです。動物解放論の一環としてベジタリアニズムを実践していることも多いでしょうが(私もこれに当てはまります)、肉が嫌いだから食べないとか、アレルギー等の理由でそもそも肉を食べられないといった人も、ベジタリアンであるわけです。また、動物解放論者は食用以外での、たとえば皮や毛といった形での動物の利用も拒否することが普通ですが、動物解放論以外の理由でベジタリアニズムを実践している場合、皮革製品などを使用している可能性があります。

ヴィーガニズムとは

ヴィーガニズムは、ベジタリアニズムをさらに進めたもので、卵や牛乳といった動物の生命を奪わない形であっても、動物の食用での利用を拒むものです。殺されなくとも、狭いケージに囚われてストレスの高い環境で生きざるを得ないのであれば、その動物はしかるべき道徳的配慮を受けていないことになる、というのが、動物解放論的な見地からヴィーガニズムが推奨される理由です。その一方で、たとえばマクロビオティックのような、基本的には人間の健康を旨としての食生活も、内容としてはヴィーガンのものと同様ですから、動物解放論者とヴィーガンが必ずしも重なるわけではありません。

まとめ

上記のように、動物解放論が動物に対する道徳的配慮を要求する立場である一方で、ベジタリアニズム・ヴィーガニズムは動物を食べることを拒むという食生活の面での実践です。私は、より正確に説明をするなら、動物解放論を唱えてヴィーガニズムを実践している、ということになります。

実践していない人にとってはいずれも似たような概念に思えるかもしれません。ベジタリアンや動物解放論者と呼ばれる人々がそれぞれどのような立場をとっているのか、上記で大まかに捉えることができると思います。