月: 2021年1月

Merveilloeufs – フランス発のヴィーガンエッグ

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最近はヴィーガン向けの食料品見かける機会が増えてきました。私の家の近所のスーパーでも、一年前には1種類だけだったソイミート(大豆肉)が、いまはそぼろタイプのもの、フィレタイプのもの、それぞれに2種類ずつくらい置かれています。植物性原料のみを使用したマヨネーズやチーズも売られるようになりました。着実に、ヴィーガン向け食品は身近なものになっています。

その一方で、見かけないのがヴィーガン向けの卵。卵も食べるベジタリアンなら問題にしないのでしょうが、ヴィーガンにとって卵はミルクと並んで避けることが難しく、また懐かしくなる食品でしょう。

ところが、フランスの研究者が、植物性原料にて卵をつくったとのことです。

https://www.euronews.com/living/2021/01/28/vegan-eggs-french-women-breaking-down-the-final-frontier-in-veganism

https://www.instagram.com/lepapondu/

上記のホームページやInstagramを見ていただければ、写真もあります。これは、卵の「味」や「食感」だけでなく、黄身と白身に分かれていること、殻に入っていることなど、鶏卵の全体を模倣したものです(さすがにカラザに当たる部分などは無いのでしょうが)。

ここまでやる必要があるかというと、個人的には必要を感じないのですが、目玉焼きのような卵の形をそのまま使う料理も可能になるという点で、メリットを感じるヴィーガンは多いでしょう。私も卵の味は好きだったので、チャンスがあればぜひ試してみたいと思います。

なお、Merveilloeufsという商品名はフランス語で「Merveil(le)=すばらしい」と「Oeuf(s)=卵」を組み合わせた造語です。読み方はホームページにはとくに書かれていないようですが、普通に読めば「メルヴェイユー」となるはずです。開発者がそういう使い方をしているか分かりませんが、単数形(Merveilloeuf)なら「メルヴェイユフ」となるのでしょうか。

開発者はパリの高等専門学校(いわゆるグランドゼコール、フランスでは大学より上に位置づけられるエリート向けの学校)の学生だそうで、事業化を進めているようです。日本進出が楽しみです。

ヴィーガニズムは環境によいわけではない?

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面白い記事を読みました。簡素であれば、通常の生活のほうがヴィーガニズムより環境に対する負荷が小さいというもので、著者は(ヴィーガンではないものの)ベジタリアンだそうです。

https://www.nzherald.co.nz/the-country/news/dr-jacqueline-rowarth-why-veganism-wont-save-the-world/3V7ADNXGUSEY6O4CUP2HBOZ3EU/

その論旨は以下の通りです。

まず、家畜の飼料について。家畜用の穀物の平均的な収量が12t/haであるのに対して、食用のものは8t/ha程度、さらに加工に際して多くの温室効果ガスが発生します。したがって、家畜を養うための飼料生産に使う土地を人間の食料生産に用いたほうがよい、という議論は必ずしも成り立たないというものです。

この議論は、細かな数字による比較がないためなんとも判断できません。ただ、肉を生産するにせよ牛乳を生産するにせよ、加工の過程で温室効果ガスが発生するはずですから、これを考慮すると畜産のほうが多くの温室効果ガスを発生させる気がします。

次の議論は、家畜が生育する中で必要とする飼料のうち、穀物は実は7%(肉牛の場合)にすぎない、というものです。面積あたりの収量の大きさと考え合わせると、畜産の飼料に使うエネルギーはもっと小さいということでしょう。しかしこれも、穀物を摂取してそれが肉に変わる効率を考えると、やはり説得力が薄いように思います。また、以下のレポートによると飼料としての小麦・トウモロコシは生産全量の3割以上はあるようなので、とても無視できる量とは言えないでしょう。

https://www.mitsui.com/mgssi/ja/report/detail/1225337_10674.html

さて、否定的なことを書いてきましたが、私としては、ヴィーガニズムが動物を利用する生活より環境に対して必ずよい、ということは言えないとも思います。むしろ、いわゆるリンダ問題と同様、論理的にはヴィーガニズムは最善の解とはなりえないでしょう。動物を利用する食料生産は、ヴィーガニズムが利用できる食料生産の一切を利用できるわけですから、ヴィーガニズムが環境にとってよい選択肢であるとしても、その中で環境負荷が高い部分と、動物利用の中で環境負荷が極めて少ない部分とを取り替えるとしたら、後者のほうが全体としての環境負荷も小さくなるはずです。

たとえば、穀物生産が難しい土地では、放牧によって多少の動物を利用するほうが、環境への影響は小さくなるでしょう。まして、魚は大量にとらない限りは環境負荷はほとんどゼロでしょうから、環境のことだけを考えて魚も消費しないヴィーガンになることは、あまり論理的とは言えません。

以上のように、リンク先の議論とは多少異なりますが、私もヴィーガニズムが環境に対して最もよい答えだとは考えていません。それでもなぜ私がヴィーガンであるかといえば、他のところで書いているように、動物解放の観点からです。

環境の観点からヴィーガンが増えて動物の苦痛が減るのであれば、動物解放論者の希望にも結果的には叶うことになります。ただ、私としては、動物解放とか種差別という概念がもっと世に広がるよう、動いていくつもりです。

ヴィーガニズムにまつわる誤解

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ヴィーガニズムがどのようなものかについては、色々な誤解があります。以下の記事で主要な5つのものについて語られていますが、日本ではどうかという観点も踏まえたうえで、私自身の考えを織り交ぜながら説明していこうと思います。

https://www.mensxp.com/special-features/features/84289-common-myths-about-veganism.html

ヴィーガニズムとベジタリアニズムはおなじもの

これについては本ブログでも書いていますので、そちらも参照いただければと思います。

大まかに言うと、ベジタリアニズムが基本的には食生活にかかわる概念であるのに対して、ヴィーガニズムは生活全般についてのものです。ベジタリアンは肉や魚を食べることを避ける一方で、皮革製品を身につけることには疑問をもたないかもしれません。ヴィーガンですと、動物を搾取すること全体を不可と考えるので、食生活から肉や魚や牛乳や卵を除くのと同時に、衣類や家具、医薬品など、自身が使用・消費するあらゆるものについて、動物由来の原料を使っていないものを選択しようとします。

ただし、ベジタリアンと名乗る人の中にも、実際には動物の解放・福祉といった観点からそうした選択をする人は大勢います。私自身も、ヴィーガンという呼び方がまだ日本では一般的でないということもあり、ベジタリアンと自称することは度々あります。ベジタリアンと自称しているからヴィーガンではない、というわけではありません。

ヴィーガンはタンパク質不足

普通の食生活から単純に動物性のものを排除しただけでは、タンパク質不足になります。これは否定しようのない事実です。

しかし、ヴィーガンがタンパク質を摂るための手段は多数あります。リンクした記事には豆類、ドライフルーツ、大豆といった食材が書かれています。日本では、とくに豆腐や納豆といった大豆製品が有力なタンパク源になるでしょう。そのほか、海外で主要なものとしてはキヌアがあります。こちら、日本でもカルディなどで売られていますし、ネットで購入することもできます。ただし、大豆に比べるとかなり割高になります。

もっと効率のよいものとしては、大豆由来のプロテイン(ソイプロテイン)があります。ただし、ものによってはソイプロテインと銘打っていても乳を含んでいるものがあるので、よく成分を確認することが必要です。

ヴィーガニズムは高くつく

これも一面の真理を含んでいると思います。普通の食生活から動物由来のものを取り除くだけであれば、食費は安くなるでしょう。皮革製品を合皮にか変えても、やはり出費は安くすむと思います。しかし普通の食生活と同じ程度のタンパク質を摂取しようと思うと、食費はかえって高くなる可能性があります。

とくに日本では農作物の価格が高いこともあって、輸入の肉類と大豆製品を比べると、タンパク質含量あたりの単価はどうしても肉類の方が安くなります。もちろん、もともと高級な肉ばかり食べているようなら、ヴィーガンになったほうが食費も安くなります。

また、これも日本ならではですが、外食が異様に安いということもポイントです。もちろん普通のレストランであれば、スーパーで食材を買って作る家庭料理よりは高くつきます。しかし、牛丼のような安さを売りにした店は、自炊するのに近い単価で食事を提供しています。残念ながら、こうした店がヴィーガン向けのメニューをもっていることはありません。もともと外食中心の食生活を送っている場合、ヴィーガンになると食費が高くなると思います。

こうしたことを踏まえた上で、多少タンパク質の摂取量を減らすことが、食費を維持するためには必要になります。

豆乳だけが選択肢

牛乳は多くの人にとって重要な栄養源であり、デザート類の味をよくするための原材料でもあるでしょう。栄養源という観点からは、植物由来の素材でも代替しやすいものです。

その一方で、デザート類、菓子類には、牛乳を使用しているものが無数にあります。普通の食生活を送っていると意識することはないかもしれませんが、試しにスーパーの菓子コーナーで原材料を確認してみれば、とくに西洋系の菓子のほとんどに乳製品が使われていることに気づくはずです。

牛乳の代替品としては、豆乳の他、リンク先に書かれているようにココナッツミルク、アーモンドミルク、ヘンプミルク、カシューミルク、ライスミルクなど、いろいろなものがあります。飲み物として消費するのであれば、多少高くはなりますが、これらのうちに気に入るものがあれば、ヴィーガンとなって困ることは少ないでしょう。

しかし、菓子を中心として、もともと多くの食材に牛乳が使われているということは、ヴィーガンにとって厄介です。パンについても、普通のスーパーの売り場には乳製品を使っていないものはほとんど置いてありません。スープも、クリーム系のもので豆乳などをベースにしているものは普通は見かけません(なお、クリーム系でなくても、スープはコンソメやチキンエキスなど使用しているので、普通のスーパーではヴィーガンの選択肢は皆無です)。

こうした利便性の面での不自由を受け入れた上で、もし乳製品を使った味をそれでも楽しみたい場合は、そうした製品が売られている店を探すか、通販を利用するか、自身で作るかする努力が必要です。

ヴィーガンは弱くなる

これも、普通の食生活から動物性のものを除くだけだったとしたら、事実でしょう。ヴィーガンという生き方を選択するなら、栄養についてはある程度意識しなければなりません。

かし、ヴィーガンだと体が弱くなるかといえば、そんなことはありません。それは、私自身の実践から、確信をもって言えます。

私は10年以上ヴィーガンをしています。風邪くらいはひくことがありますが、ヴィーガンになってから病気になりやすくなったということも、大病を患ったことも、気力が出ないとか体がだるいといったこともありません。

健康診断の結果も、まったく異状なしです。ただし、最初はヘマトクリット値が低いと診断されたことはありました。もともとそういう体質だったのか、ヴィーガンとなったからなのかは分かりませんが、その後鉄分を意識して摂るようにしてからは、その問題もなくなりました。

もともと何かしら体に問題がある場合には、動物性のものを摂らなくなることで健康に害が生じることはあるのかもしれません。あくまで自身の可能な範囲で試してみてもらえればと思います。もともと健康ならば、少し栄養のことを意識するだけで、ヴィーガンとなっても特段の問題は起こらないでしょう。関心があれば、まずは短期間だけでも、実践してみてはいかがでしょうか。

Wagamamaが肉の使用を2021年中に半分に

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イギリスにおよそ150軒ほどあるというアジア料理チェーンWagamamaが、メニューから肉を使用する料理を半減させるという宣言をしたそうです。ヴィーガニズム運動の中心であるイギリスでも、一定以上の規模をもつレストランがヴィーガンへとシフトしていこうとすることは、かなり勇気のいる経営判断だったのではないでしょうか。

このWagamamaというレストラン、名前は日本語ですが、創立者は香港出身で、日本進出はしていないようです。ホームページにはシェフが日本にて研究を重ねてきたといった記述があります。が、ヴィーガンメニューのところに書いてある「kare burosu ramen」など、おいしそうではあるものの得体の知れないメニューもあり、日本食と呼べるかどうかというと微妙なラインです。

Wagamamaのホームページは以下です。

https://www.wagamama.com/

日本食のヴィーガン版がかえって海外で発展して、そのうち日本にも入ってきて日本の食文化も刺激を受ける――といったことがあれば、日本での食のあり方もまた多少は変わるでしょうか。今後の展開に期待したいものです。

新型コロナウイルスワクチンはヴィーガン仕様か?

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コロナ禍が始まって一年を迎えようとする中、開発されつつあるワクチンがはたして有効なものかどうかということは、世界中の人々が関心を寄せるところでしょう。

ところで、ヴィーガンにとっては、医薬品を使うにあたって気にかかることがあります。「その薬はヴィーガン仕様か?」という問題です。

結論から言えば、完全にヴィーガンな医薬品はないと思ったほうがよいでしょう。新型コロナウイルスのワクチンについてもそうです。

医薬品が動物と関わる仕方は主に2つあります。第1に、医薬品自体に動物由来の成分が含まれている場合。第2に、医薬品の効果や安全性を検証する過程でいわゆる動物実験が行われている場合。

以下のサイトによると、新型コロナのワクチンでは、いま一番注目されているファイザーのもので、64匹のマウスと42匹のマカク猿が実験に供されたそうです。

Speaking about the vaccine, Dr. Bitterman says there was animal testing – as with any other medical product. Speaking specifically about the Pfizer vaccine, he says 106 animals in total were used in testing (and then killed). This breaks down into 64 mice and 42 macaque monkeys. When it comes to another vaccine (Moderna), he says the data isn’t as clear, but he believes the number to be similar.

https://plantbasednews.org/lifestyle/health/is-covid-vaccine-vegan/

このサイトでは、ワクチンの開発過程で動物が実験に供されているものの、ワクチンを使うことによって無数の命が救われることを考えると、ヴィーガンであってもワクチンを使うべきとの主張をしています。功利主義的な言い方をすれば、快楽計算をしてみると、得られる人間の利益のほうが、動物が被る損害より大きくなるはずだ、ということでしょう。

私自身はワクチンが安全で利用可能となったときに使うかどうかはまだ決めかねていますが、上記の考え方は動物解放の観点からも肯定されるものではないかと思っています。理想は、ワクチンの開発が不要となるほど早くにコロナ禍が収まることですが…