千代田区が公式YouTubeチャンネルにて「食の多様性」を紹介
千代田区公式YouTubeの取り組み
千代田区が公式YouTubeにて「食の多様性」を学ぶ動画を公開しています。
https://www.youtube.com/user/chiyodacity
ハラールについての紹介動画と並んで、【ベジタリアン、ヴィーガン、グルテンフリーって何だろう?】というものもあります。
あくまで「食」に限っての違いを説明する動画としては、大変分かりやすいと思います。その一方で、これを見たからといってなぜベジタリアンやヴィーガンになるのかという理由については分かりません。また、いくつか気になる点もありました。
以下、本動画で不振に感じた点を挙げてみます。なお、その意図としては、ただ非難することではなく、ヴィーガンやベジタリアンについてより正確な・今の時代にあった情報提供をしていただきたいという思いと、そうした細部の補足をしたいという思いにありますので、誤解のないよう。
引用されている調査が古い
動画内で1992年のかなり古い調査結果が紹介されており、それによるとベジタリアンとなった理由の1番は「健康」で46%、ついで「動物愛護」15%、「家族・友人の影響」12%となっています。
その次に「論理的」5%となっていますが、これは「倫理的」の誤りではないでしょうか…?動画ではこれを飛ばして「環境問題」4%には触れていました。
この調査がいったいどのようなものだったのか、少し検索してみましたが分かりませんでした。いずれにせよ、現在のトレンドを紹介する資料で引用されている調査結果が30年前のものでは、説得力がありません。
ベジタリアンの語源は?
動画中にVegetarianという言葉が「Vegetusから来た」という説明がありますが、これはおそらく誤りです。
Oxford English Dictionaryによれば、ベジタリアンはvegetableと-arianの組み合わせにより生じたとされています。(-arianというのは、ある信念をもっている人を表す接尾辞です。)
なお、ヴェジタリアンという言葉がVegetusから来たという説の由来や信憑性の低さを説明するものとして、以下のサイトがあります。
https://www.macquariedictionary.com.au/blog/article/165/
日本にヴィーガンは何人いるのか?
日本にヴィーガンが500万人以上いる、あるいは、日本人のヴィーガン割合が2.7%という説明もありましたが、これも、個人的には疑わしく思っています。以前ベジタリアン協会の講演を聞いたことがありますが、その時も同様の数字が紹介されていました。
私自身はヴィーガンですし、ヴィーガンが増えればよいと思っていますが、それにしてもこの数字は楽観的過ぎるのではないでしょうか。人口の2.7%とすると40人に1人以上はヴィーガンということになります。
たとえば以下の調査ではヴィーガンが2.1%となっていますが、これは「取り組んでいる食生活」を答えるもので、おそらく「毎食ではないがときどきそのような食生活を選択することがある」ような人も多少含んでいるのではないかと思います。
こうした数字を見る限り、日本人口の2.7%がヴィーガンというのはちょっと信じられません。
以上、気になったポイントをいくつか挙げてみました。行政としてこのような動画を作成した千代田区の取り組みはすばらしいものと思います。ただ、せっかく作るのであれば、もっと説得力のあるデータや議論を用意したうえで、ベジタリアニズムやヴィーガニズムがそもそも何を目的としたものなのかという議論まで含めていただきたいものです。