ヴィーガニズムは環境によいわけではない?

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面白い記事を読みました。簡素であれば、通常の生活のほうがヴィーガニズムより環境に対する負荷が小さいというもので、著者は(ヴィーガンではないものの)ベジタリアンだそうです。

https://www.nzherald.co.nz/the-country/news/dr-jacqueline-rowarth-why-veganism-wont-save-the-world/3V7ADNXGUSEY6O4CUP2HBOZ3EU/

その論旨は以下の通りです。

まず、家畜の飼料について。家畜用の穀物の平均的な収量が12t/haであるのに対して、食用のものは8t/ha程度、さらに加工に際して多くの温室効果ガスが発生します。したがって、家畜を養うための飼料生産に使う土地を人間の食料生産に用いたほうがよい、という議論は必ずしも成り立たないというものです。

この議論は、細かな数字による比較がないためなんとも判断できません。ただ、肉を生産するにせよ牛乳を生産するにせよ、加工の過程で温室効果ガスが発生するはずですから、これを考慮すると畜産のほうが多くの温室効果ガスを発生させる気がします。

次の議論は、家畜が生育する中で必要とする飼料のうち、穀物は実は7%(肉牛の場合)にすぎない、というものです。面積あたりの収量の大きさと考え合わせると、畜産の飼料に使うエネルギーはもっと小さいということでしょう。しかしこれも、穀物を摂取してそれが肉に変わる効率を考えると、やはり説得力が薄いように思います。また、以下のレポートによると飼料としての小麦・トウモロコシは生産全量の3割以上はあるようなので、とても無視できる量とは言えないでしょう。

https://www.mitsui.com/mgssi/ja/report/detail/1225337_10674.html

さて、否定的なことを書いてきましたが、私としては、ヴィーガニズムが動物を利用する生活より環境に対して必ずよい、ということは言えないとも思います。むしろ、いわゆるリンダ問題と同様、論理的にはヴィーガニズムは最善の解とはなりえないでしょう。動物を利用する食料生産は、ヴィーガニズムが利用できる食料生産の一切を利用できるわけですから、ヴィーガニズムが環境にとってよい選択肢であるとしても、その中で環境負荷が高い部分と、動物利用の中で環境負荷が極めて少ない部分とを取り替えるとしたら、後者のほうが全体としての環境負荷も小さくなるはずです。

たとえば、穀物生産が難しい土地では、放牧によって多少の動物を利用するほうが、環境への影響は小さくなるでしょう。まして、魚は大量にとらない限りは環境負荷はほとんどゼロでしょうから、環境のことだけを考えて魚も消費しないヴィーガンになることは、あまり論理的とは言えません。

以上のように、リンク先の議論とは多少異なりますが、私もヴィーガニズムが環境に対して最もよい答えだとは考えていません。それでもなぜ私がヴィーガンであるかといえば、他のところで書いているように、動物解放の観点からです。

環境の観点からヴィーガンが増えて動物の苦痛が減るのであれば、動物解放論者の希望にも結果的には叶うことになります。ただ、私としては、動物解放とか種差別という概念がもっと世に広がるよう、動いていくつもりです。

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