月: 2018年1月

空の上でベジタリアン――機内特別食のすすめ

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私がヴィーガンで、しかもいろいろな国に出張すると知った人からは、よく、飛行機では何を食べているのかと尋ねられます。
外食について言えば、海外のほうがむしろ日本より簡単です。しかし飛行機の中では「Beef or chicken?」のような、限られた選択肢しかなさそうです。
どうすればいいのでしょうか?

 

食事に制限がある人には機内特別食という選択肢がある

 

ご存じない方も多いかもしれませんが、実はほとんどの航空会社が、機内特別食というものを用意してくれますアレルギーをもっている人や、宗教等の理由で特定の食材を食べない人、また私のようなベジタリアンやヴィーガンなど、食事に制限がある人に、特別な食事を用意してくれるのです。

 

これには普通はオプション料金はかかりません

 

選択肢には、ベジタリアン向けのものやヴィーガン向けのもの(厳格なベジタリアン向け、ストリクトベジタリアン向けなどと表記されていることもあります)ももちろん、イスラム教徒向けのもの(ハラール)、ヒンドゥー・ベジタリアン向けのもの(牛乳は使用)、グルテン・フリーのものなど、様々な種類のものがあります。参考までに、JALには以下のオプションがあるそうです(2017/1/13時点)。

 

  • 乳幼児食
  • チャイルドミール
  • ベジタリアンミール(卵と乳製品を使用)
  • ベジタリアンミール(卵と乳製品を不使用)
  • 低脂肪ミール
  • 低塩分ミール
  • 低カロリーミール
  • 低グルテンミール
  • 消化の良い食事
  • 糖尿病ミール
  • フルーツミール
  • ベジタリアンミール(生野菜)
  • シーフードミール
  • 低乳糖ミール
  • ヒンズー教ミール
  • ヒンズー教ベジタリアンミール(アジア風)
  • オリエンタルベジタリアンミール
  • イスラム教ミール
  • ジャイナ教ベジタリアンミール
  • アレルギー対応食
  • ユダヤ教ミール

 

私はJALを一番よく使っており、毎回卵と乳製品を使用していないベジタリアンミールを注文しています。

 

機内特別食の申し込み方――忘れていても最後まであきらめない

 

申し込みの仕方は簡単で、航空券の予約と同時に注文できることが多いです。航空会社のWebサイトから予約する場合は、入力画面をよくよく見てみると、機内食を選択するところがあると思います。搭乗者の情報を入力する画面で一緒に選択することが多いようです。
電話での予約の場合は、特別食を希望することを伝えるだけでOKです。

 

航空会社によっては、航空券の予約をした後で、予約の管理画面を開いて特別食を選ぶようになっている場合もあります。たとえば、最近私が予約をしたイベリア航空はこのタイプで、航空券の予約の時点ではワンランク上の、追加料金を払わねばならない高級機内食の選択はできるものの、この時点での選択肢にはベジタリアンミールなどはなく、追加料金なしの特別食は予約管理画面から注文するようになっていました。

 

予約をする前に、念のために、どのような選択肢があり、どのように注文するのか、調べておくとよいでしょう。

 

ただし、予約時に選択を忘れた場合も、あるいはWebサイト以外から予約した場合も、心配ありません。普通は、電話なりメールなりで対応してもらえます。搭乗の24時間前まで希望を受け付けている場合が多いです。ただし、特殊なものについては2-3日前に注文しなければならないこともあるようです。

 

ちなみに、私は一度特別食の注文をうっかり忘れていたことに搭乗の5-6時間前に気づいたことがあります。ダメ元であわてて申し込んだところ、なんと用意していただいていました。搭乗直前に申し込みを忘れていても、諦めずに注文してみると、何とかなるかもしれません。

 

機内特別食の味は…

 

さて、気になる食事の質ですが…航空会社による甲乙はあるものの、やはり、通常の機内食よりは劣ってしまいます

 

私の経験では、JALでは蒸し野菜やサラダが多く、単調です。
海外の航空会社のように、塩と胡椒がついていればいくらか味付けもできるのですが、残念ながらJALにはありません(もしかしたらお願いしたらもってきてもらえるのかもしれませんが)。しかし、サービス全体の質が高く安定しているので結局はJALを使いつづけています。
ANAもJALと似たり寄ったりといった印象でした。
日本の味付けにはあまりベジタリアン向けのものがないので、致し方ないのでしょう。

 

海外のエアラインでは、カンタスやエールフランスのものがおいしかったと記憶しています。
アメリカンやデルタなど、アメリカ系の航空会社のものも悪くはありません。
やはり、ベジタリアンが多い国のベジタリアンミールは、なかなか凝ったものが出ることが多いです。残念なことに私はまだブリティッシュエアウェイズやエアインディアなど、ベジタリアンの本場の国の航空会社は利用したことがないので、いつかぜひ試してみたいところです。

 

他のメリットやデメリットは?

 

さて、私の場合はヴィーガンなので機内特別食を注文せざるをえないわけですが、注文する場合のメリットとしては、通常の食事が運ばれるより先に、優先的に食事を出してもらえるということがあります(一部航空会社・空路によっては通常の食事と一緒にもってこられることもあります)。これにより、食事が配膳される順番が最後に近く、食べ始めるまでずっと待たねばならない…といったことを回避できます。

 

反対に、デメリットとしては(味が劣ることが多いということは別として)、特別な食事を注文しているわけなので、寝ていようが問答無用で起こされて食事を食べるよう促されてしまうことがあります(プレミアム・エコノミー以上のクラスであればそういうことはないようなのですが…)。
これを避けるには、サービスお断りのサインを出すなりあらかじめCAさんに伝えておくなりしておかねばなりません。

 

特別食は誰でも注文できる

 

以上はベジタリアンであれば知っている情報でしょうが、ベジタリアンでなくとも、機内特別食を注文することはできます

 

ベジタリアンの食事がどのようなものか興味がありましたら、注文してみてはいかがでしょうか?真っ先に食事が運ばれてくるというメリットつきです。

ベジタリアンは離乳食づくりをどうするべきか?

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ベジタリアンの子どもはベジタリアン?

 

プロフィールにも書いていますが、私はベジタリアン(ヴィーガン)です。妻はベジタリアンではありませんが、パートナーがベジタリアンであろうがなかろうが、子どもの食事をどうするかは、ベジタリアンにとっては問題でしょう。

 

私がどうしてベジタリアンになったのかといったことはそのうちに書くとして、今回は、ベジタリアンとして子どもにどのような食事を与えるべきか、私自身の意見を書きたく思います。

 

私は、子どもには離乳食として肉や魚などを与えています。しかし、本音を言えば、与えたくはありません。私自身の立場は以下のようなものです。

  • 人間が人種や性別に関わらずに倫理的な配慮の対象となる根拠(の一つ)は、こういったカテゴリーに関わらずに人間が苦痛などの感覚を感じることにあると考えられる。そうであれば、苦痛を感じる(と思われる)動物についても倫理的な配慮の対象とするべきであり、不当に危害を加えることはできない。
  • 仮に人間だけを倫理的な配慮の対象とするとしても、人がベジタリアンとなることには人間自身にとってもよいことだと考えられる。たとえば、肉の生産にはその何倍もの飼料が必要であり、その飼料生産に必要な土地とエネルギーを人間の食料生産に振り替えれば、地球規模での食料問題は解決されうるし、農業生産を減らすこともできるはずなので環境への負荷も低減される。

 

それでどうして子どもにはベジタリアンの食生活をさせていないかというと、以下のような理由によります。

 

ベジタリアンになるか否かは子どもたちが自分で決めるべき

 

上で述べたように、私の妻はベジタリアンではありません。それでも、私が動物解放論を指示するということに理解を示してくれてはいますし、家庭では基本的には私と同じくヴィーガンの食生活を送ってくれてもいます(でなければ結婚できなかったと思います)。しかし、ベジタリアンになったというわけではありません。

 

同様に、ベジタリアンの生活のほうが倫理的によりよいということを理解していながら、それを実践していない人は多くいると思います。たとえば、『動物からの倫理学入門』という本を書かれた哲学者の伊勢田哲治さんは、倫理学的には動物解放論が有力であるとしながらも、少なくともこの本の執筆時点ではベジタリアンではありません。

 

私自身ももちろん感じていることですが、ベジタリアンの生活を実践しようと踏み切るのは、あまり簡単なことではありません。とくに日本では、欧米で実践するよりもずっと難しいでしょう。何か危ない宗教にはまってしまったのではないかとか、食文化を侮辱しているとか、そういったことを言われることもあります。

 

こうした困難を、まだ言葉もわからない赤ちゃんに、本人の分からないうちから背負わせてしまっていいものか、私には自信がありません。

 

チャンドラセカールという高名な物理学者の伝記で、以下のような下りを読んだことがあります。チャンドラセカールは、物理学の研究のため、故郷のインドからイギリスへ渡りました。そこで彼はベジタリアンの生活を厳格に守るのが難しいと思い知らされることになりますが、それでも、それまでベジタリアンでいつづけたことを誇りに思ったそうです。
インド生まれたのであれば、ベジタリアンの生活を誇らしく思うことが容易にできるでしょう。しかしあいにく日本はインドではありません。

 

私の理想は、子どもたちもベジタリアンになることです。しかしそれは、誰かに強制されてであってはなりません。自分たち自身で考えた結果として、その決断によって被るかもしれない種々の不条理を自身の責任で引き受ける決心をしたうえで、自分が正しいと思う生き方を選び取ってもらいたいと思っています。